当協会特別顧問・山田豊文先生が推薦していた書籍に『奇蹟のマグネシウム』という本があります。
この本の著者はキャロリンキャロリン・ディーン博士、2017年に第2版が出版されていますが残念ながら未邦訳です。
そこで、その第2版の中身を少しずつご紹介していきたいと思います。
今回は、膵臓がインスリンを分泌するのにマグネシウムがどれだけ重要か!という内容になります。皆さまもご存じのとおり、インスリンは血糖値を下げる重要なホルモンです。
(原文)
MAGNESIUM PREVENTS AND TREATS DIABETES AND DIABETIC SYMPTOMS
A 2016 review paper gives an excellent summation of what we know about magnesium and diabetes.※26) The reviewers confirm that doctors have known for decades that
magnesium deficiency has been strongly associated with type 2 diabetes. They know
that if magnesium levels are low, the disease progresses rapidly, with a greater
likelihood of complications. Research also shows that patients with low levels of
magnesium have reduced pancreatic β-cell activity, therefore producing less insulin,
and making the cells more insulin resistant. They report that supplementation with
magnesium improves glucose metabolism and insulin sensitivity. The many actions of
magnesium are complex but include regulation of glucokinase, KATP channels, and Ltype
calcium channels in pancreatic β-cells, preceding insulin secretion. Also, the
necessary addition of phosphorus to insulin receptors depends on magnesium, making
it a direct factor in the development of insulin resistance. This is not just a one-way
relationship, because insulin is an important regulator of magnesium ion homeostasis.
In the kidneys, insulin activates the renal magnesium channels that determine how
much urinary magnesium is excreted. As a result, patients with type 2 diabetes and
hypomagnesemia enter a vicious circle in which low magnesium causes insulin
resistance and insulin resistance reduces serum magnesium.
※26)Gommers LM et al., “Hypomagnesemia in type 2 diabetes: a vicious circle?”
Diabetes, vol. 65, no. 1, pp. 3?13, 2016.
マグネシウムは糖尿病と糖尿病症状を予防・治療する
2016年の研究論文では、マグネシウムと糖尿病について分かっていることをとても良くまとめています(26。
論文内では、マグネシウムの欠乏が2型糖尿病と強く関連していることは何十年も前から医師も分かっていると指摘しています。
マグネシウムが不足すると、糖尿病は急速に進行し合併症を引き起こす可能性が高くなるのです。
また、マグネシウムが不足すると、膵臓のβ細胞の活性が低下し、インスリンの分泌が減少したり、インスリン抵抗性(※インスリンの効きが悪くなること)が強くなります。
マグネシウムを補給することで、糖代謝とインスリン感受性が改善される
という報告もされています。
マグネシウムの多くの作用は複雑ですが、膵臓β細胞のグルコキナーゼ(※解糖系の酵素)、K(カリウム)ATPチャネル、L型カルシウムチャネルを調節し、インスリン分泌を先行させることが挙げられます(下図)。
また、(※骨格筋、脂肪細胞などのインスリンを受け取る側の)インスリン受容体に必須のリン(P)の付加は、マグネシウムに依存しており、インスリン抵抗性の発現に直接関与しています。
マグネシウム欠乏がインスリン分泌に影響を与えるだけではなく、
インスリンはマグネシウムイオンのホメオスタシス維持に欠かせない
調節因子となり、体内のマグネシウム量を調節しています。
腎臓では、インスリンが腎マグネシウムチャネルを活性化し、尿中マグネシウムの排泄量を決定しています。
その結果、2型糖尿病と低マグネシウム血症の患者は、低マグネシウムがインスリン抵抗性を引き起こし、インスリン抵抗性が血液中のマグネシウムを減少させるという悪循環を引き起こしてしまうのです。