免疫力が上がる方法は断食?免疫×ミネラルファスティングの研究

ミネラルファスティングと免疫力の画像

ダイエットの方法として注目されているファスティング(断食)によって免疫力が上がる効果について、人の血液検査結果をもとに検証された「ミネラルファスティング」の研究と食に関する考察を紹介します。

医療顧問の野口先生に教えていただきました。

ファスティング(断食)によって免疫力は本当に上がるのか?

歴史上、医療の現場で実践されてきた治療法としての断食療法ではなく、当協会が推奨する断食メソッド「ミネラルファスティング」において、体重減少の効果を証明した日本国内の研究結果は存在するものの、ファスティング(断食)が免疫に与える影響を健康な人の集団レベルで証明した日本国内の研究は2024年1月現在、知られていません。

一方で、3日間の断食が免疫系全体を再生させるという海外の研究結果は存在するものの、この研究は人ではなくマウスで行われたため、それが人にも起こるとは限りません。

また、ファスティング(断食)によって免疫力がアップするかどうかについては、賛否両論あるようです。

そこで今回、分子整合医学美容食育協会(ファスティングマイスター学院)では、60名以上の全国のファスティングマイスター(ミネラルファスティングの実践者)の協力のもと、ファスティング(断食)が免疫に与える影響を、人間で検証する「臨床研究プロジェクト」を試みました。

今回の臨床研究プロジェクトでは、水だけで行われる断食ではなく、断食期間中の代謝を助けるマグネシウム、MSM(メチルスルフォニルメタン)、そして、L-カルニチンを含む発酵ドリンクを摂取する「ミネラルファスティング」という方法を用いることで、過度の糖新生(体内の脂肪やタンパク質といった栄養素をブドウ糖に変えてエネルギーとして利用しようとする反応)およびアシドーシス(酸の蓄積またはアルカリの欠乏を引き起こす生理的な状態)による有害事象の発生を防ぎながらファスティング(断食)が行われました。

その結果、人間の血液(末梢静脈血)中の免疫細胞の数および割合に与える影響、つまり、ファスティング(断食)が免疫に与える影響について、次のようなデータが得られました。

※学術的な研究プロジェクトとして行った結果ですので、あえて専門用語を交えてデータを紹介します。

イメージ画像

ミネラルファスティングが免疫細胞の数および割合に与える影響

《対象および方法》

1.対象者

31歳から68歳までの健常者で自らファスティングを希望した男性と女性(計62名)

2.プログラム(実施したファスティングの方法)

プログラムは、8日間のファスティングとし、準備期間(体がファスティングに慣れるための期間)2日間、断食期間3日間、回復期間3日間とした。ファスティング後は通常の食生活に戻るよう指示した。

一方で、断食期初日(断食期間1日目)、復食期初日(回復期間1日目)、2週間後(断食期間1日目から数えて14日後または15日後)の早朝空腹時に免疫細胞(白血球とリンパ球)の数および割合を測定するための血液(末梢静脈血)検査を実施した。

なお、準備期間、断食期間、回復期間、血液検査に関する詳細は下記の通りである。

【準備期間】植物性発酵食品を中心とした和食のみを食べることによりファスティングに慣れるための期間。

【断食期間】代謝を助けるマグネシウム、メチルスルフォニルメタン、そして、L-カルニチンを含む発酵ドリンクならびに水分のみを朝起きてから夜寝るまでの時間に1日数回に分けて摂取する期間。

【回復期間】重湯など、消化に負担をかけない摂食から徐々に通常の食生活に戻るための期間。

【血液検査】自治医科大学附属さいたま医療センターにより通常採血と同等の高精度な検査が可能という外部評価が得られている多機能微量採血管「キャピラリーカップ」を使用し、指先穿刺による自己採血を実施。採取された血液検体は郵送によって検査場へ運ばれ、測定された白血球数(/μL)およびリンパ球の割合(%)からリンパ球数(/μL)を算出した。なお、検査場で測定が行われない休日のある期間に本研究を実施したため、断食期初日から2週間後の自己採血は断食期間1日目から数えて14日後または15日後とした。

《結果》白血球数(/μL)、リンパ球の割合(%)、リンパ球数(/μL)の3項目について、断食期初日を基点として、復食期初日、2週間後の各2時点間でボンフェローニ調整した対応のあるt検定(科学的根拠を証明する際に用いられる統計学的手法の一種)を行った。有意水準は0.05とした。

断食期間3日間のミネラル ファスティング実施から、断食期初日を基点として、復食期初日、2週間後の各2時点間でボンフェローニ調整した対応のあるt検定(科学的根拠を証明する際に用いられる統計学的手法の一種)を行った時の画像

復食期初日との比較では、白血球数とリンパ球の割合については有意差が見られ(p=0.001、p<0.001)、リンパ球数については有意差が見られなかった(p=1)。2週間後との比較では、3項目とも有意差は見られなかった(p=0.386、p=0.364、p=0.066)。

《まとめ》断食期間3日間のミネラルファスティング実施によって、免疫の要となるリンパ球の割合が断食期前後で有意に増加した。一方、断食期前後で白血球数は有意に低下したものの、リンパ球数の低下は有意ではなかった。断食後、通常の食生活に戻って行われた断食期初日から2週間後の血液検査では、断食期初日と比べ、白血球数、リンパ球の割合、リンパ球数ともに統計的な有意差は見られなかった。

リンパ球数の推移
リンパ球数の割合の推移
白血球数の推移

ミネラルファスティングが免疫に与える影響に関する考察

編集部
編集部

以上のデータについて、野口基礎医療クリニックの院長で分子整合医学美容食育協会の医療顧問を務める野口勇人医師は、ファスティングに関する相談や病気の予防に繋がる講演ほか様々な活動に加え、がん治療を行う免疫療法専門クリニックでの勤務経験から、次のような考察を導き出しています。

「断食期前後で免疫の要となるリンパ球の割合が有意に増加したことから、ミネラルファスティングは人における免疫のスイッチをオンにする可能性が示唆された。」

つまり、ミネラルファスティングによって免疫の要となるリンパ球の産生能力(割合) が上がったと言えるでしょう。『白血球の自律神経支配の法則』によると、リンパ球の割合は副交感神経が優位になることで増加することが知られています。

一方で、副交感神経は単にリラックスのために働く神経ではなく、排泄を司る神経であり、デトックス(不要な物の排出)の要となる肝臓および腸の働きを活性化します。リンパ球は肝臓や腸管といった生体防御の最前線に分布しているため、断食期間3日間のミネラルファスティングによって副交感神経が優位になり、肝臓および腸の働きが活性化され、デトックスの機能と共にリンパ球の産生能力の向上が期待できるでしょう。

また、断食期前後で白血球数が有意に低下した理由について、杏林予防医学研究所の山田豊文所長は、次のように述べています。

「そもそも食事は人の体にとって異物であるが、その異物がファスティング(断食)中は入ってこないし、オートファジー(自食作用)も活性化されるため、細胞内の異物が一掃される。すると、異物の処理を担当している白血球の仕事が減るため、白血球の総数が減ってもおかしくない。」
ファスティングのイメージ画像

ファスティング後に取り組むべきことは?

ファスティング(断食)によって有意に低下し得る白血球数を回復させ、ファスティング後のリンパ球数を有意に増加させ得る要因の発見が望まれます。なぜなら、それが発見されれば、ファスティング(断食)によって有意に増加するリンパ球の割合をファスティング後も活かすことができ、免疫の要となるリンパ球の数が適度に増加した状態を維持できるようになるはずだからです。

リンパ球をはじめとする免疫細胞に影響を与える要因のひとつとして、細胞の構成要素である栄養が挙げられます。したがって、ファスティング(断食)による免疫スイッチ・オン効果の維持につながるファスティング後の食生活を確立していく必要があるでしょう。

今回の研究データをよく見てみると、統計的な有意差は見られなかったものの、通常の食生活に戻った後に行われた血液検査で白血球数とリンパ球数は断食前よりも増加傾向にあるようにみえます。被験者の大半は、分子整合医学美容食育協会が認定しているファスティングマイスターおよび健康美容食育士の資格を有しており、ミネラルファスティング後に取り組むべき食生活について心得ています。

ですので、もし被験者全員がファスティングマイスターおよび健康美容食育士の有資格者で、ミネラルファスティング後に取り組むべき食生活を遵守したならば、通常の食生活に戻った後に行われた血液検査でも統計的な有意差が得られたかもしれません。

つまり、ファスティング(断食)によって得られる免疫スイッチ・オン効果を活かすためには、ファスティング後どのようなものを食べ、何を食べないようにするべきかを知り、実践することが大切であるということでしょう。

以上の臨床研究プロジェクトの結果や考察について、今後、学会等で公に発表できたらと考えています。

分子整合医学美容食育協会では、免疫力の向上に役立つミネラルファスティングだけでなく、ファスティング後の生活習慣の改善に欠かせない「食育」の情報についても学ぶことができます。ファスティングと食育を学べるファスティングマイスター学院のホームページはこちらです。

▼ファスティングマイスター学院

文責:分子整合医学美容食育協会 医療顧問 野口 勇人(総合内科医) 

著書『免疫を高める食事』(野口勇人著 三和書籍 電子書籍もあります)

編集部A
編集部A

記事を書いていただいたのは、野口基礎医療クリニック院長、野口勇人医師。人々が真の健康を取り戻すための活動として、予防医学やセルフ・ケアをテーマとした各種講演活動および動画出演。また、特別養護老人ホームの産業医活動、自宅でも可能な指先からの微量採血キットによるヘルス・ケアおよび全国から集まってくる血液データの解析にも力を入れている。これまでの活動で、主に食事・運動・睡眠バランスの大切さを伝えることにより、心身ともに健やかな人づくりに貢献しています。そして、お会いされた方はお分かりになると思いますが、とてもユニークなドクターです(笑) 

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