![【宮大工】西岡常一さんのことば](https://mfasting.com/wp-content/uploads/assets/n702998162fd9_77a4d0a7a563dfd50afc0ed1ccddb54d.jpeg)
法隆寺の宮大工で西岡常一さん(1908~1995)という方がいました。
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宮大工とは、神社や仏閣の建築・修繕を専門にしている大工職人で、
釘などは一切使用せず、木と木の木組みだけで建築するという、
非常に高度な技術を必要とする日本の伝統的な匠(たくみ)です。
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木もいろんな癖があるようです。
人間同様、それぞれ個性を持った木を、数百年後の曲がり方の変化などを
考慮しながら組んでいくという、まさに神業です。
木から聞いて学び、木を知り尽くして木組みしていく。
生涯をとおして、そのような仕事を全うした西岡常一さんのことばを、
紹介させていただきます。
『私ら檜(ひのき)を使って塔を造るときは、
少なくとも三百年後の姿を思い浮かべて造っていきますのや。
三百年後には設計図通りの姿になるやろうと思って、
考えて隅木(すみぎ)を入れてますのや』
『塔のなかは外側と違いまして、そのしくみがよくわかりますのや。
表側は削ってきれいにしてありますけど、
奥のほうでがっしりと木が重なりあっていましてな、
それがよう計算されているんですな。
塔を支えるために木がしのぎを削っていますのや。
それを見ましても昔の大工が木をどう考えていたかが、よくわかります。
癖の強い木をうまいこと生かしましてな、
右に捻(ねじ)れる木と左に捻れる木を組み合わせてあります』
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『大工にも自然観が必要なんです。
自分より大きな自然というものに対して
きちんとした考えを持たなあかんですよ。
やっぱりたった一本の木でも、
それがどんなふうにして種がまかれ、
時期が来て仲間と競争して大きくなった。
そこはどんな山やったんやろ、
風は強かったやろか、
お日さんはどっちから当たったんやろ、
私ならそんなこと考えますもんな。
それで、その木の持っている特質を生かしてやらな、
たとえ名材といえども無駄になってしまいますわ』
『自然には、急ぐとか早道みたいなもんはないですからな。
春に植えた稲は秋まで育てんと実がつきませんがな。
人間がいくら急かしても焦っても、
自然の時の流れは早うなりませんのでな。
急いだら米は実らんし、木は太うならん。
一度余裕をなくして儲けを追い出したら、
時間を待つこともできんし、
休むこともできんし、
どうしても「早く、早く」ということになりますな』
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『親方のいうことにいちいち反対しているうちは、
親方のいうことがわかりませんのや。
一度、生まれたままの素直な気持ちにならんと、
他人のいうことは理解できません。
素直で、自然であれば正直に移っていきますな。
そのなかから道が見つかるんです。
何にも知らんということを自分でわからなならん。
本を読んで予備知識を持って、
こんなもんやろと思ってもろても、
そうはいかんのです。
頭に記憶はあっても、
何にもしてこなかったその子の手には何の記憶も残りませんのや。
それを身につけにくるのが弟子です。
技は技だけで身につくものやないんです。
技は心と一緒に進歩していくんです。
一体ですな。
なかなか手と頭はつながらんのです』